「効率よくやらなきゃ」と思うほど、なぜか心が疲れてしまう。そんな感覚が続いていた時期がありました。
仕事は早く終わらせる。動画は倍速で見る。本は要約で読む。
そんなふうにタイパ(タイムパフォーマンス。かけた時間に対して得られる効果のこと)を意識しすぎていたころは、何をしても楽しいと感じられない状態でした。今振り返ると、時間を「どれだけ有効に使えたか」ばかり気にして、その時間を楽しめていたかどうかを見ていなかったのかもしれません。
合理的で便利な社会になった一方で、同じような感覚を抱く人は少なくないように思います。
「自分は何に幸せを感じていたんだろう」
「何をしているときが楽しかったんだろう」
タイパや効率を追い続けると、自分が本当に大切にしていたものさえ見えにくくなることがあります。この記事では、自分だけの「豊かな時間」を思い出すための4つの方法を紹介します。
この記事でわかること
- 「豊かな時間」を見失う理由
- 豊かな時間を思い出す4つの問い
- 私が試して感じたこと
- プログラミングの学びとのつながり
結論
効率ばかり追っていると、自分にとって心地よい時間を見失いがちです。五感の記憶や子どものころの「むだ」、感情の記録をたどると、自分らしい豊かな時間を思い出せます。
なぜ「豊かな時間」を見失うのか
現代の社会は、効率化を強く求めます。何かをするたびに、「意味はあるのか」「役に立つのか」と考えるようになります。
しかし人生には、成果とは関係のない価値もあります。散歩をすること。友人と雑談すること。夕焼けを眺めること。
Photo by Aimee Giles on Unsplash
こうした時間は数字では測れません。だからこそ、忙しい毎日の中で見失われやすいのです。
方法① 五感の記憶をスキャンする
まずは、論理ではなく感覚に注目してみましょう。人間の記憶は、五感と深く結びついています。
思い出してみたい感覚
- 好きだった雨音
- 実家の匂い
- 古い本の香り
- お気に入りの毛布の感触
- 夏祭りの音
こうした感覚を思い出すと、その当時の感情や風景も一緒によみがえることがあります。
方法② 子どもの頃の「無駄」を思い出す
Photo by Huy Hung Trinh on Unsplash
子どもはタイパを気にしません。だからこそ、本当に好きなことに夢中になれます。次の質問を、自分に投げかけてみてください。
- 何時間でも続けられた遊びは?
- 大人に止められてもやめたくなかったことは?
- 意味がなくても楽しかったことは?
そこには、あなたの内側から湧く興味が隠れています。豊かな時間の原型は、子どもの頃の夢中の中に残っていることが少なくありません。
私の場合は、幼いころ板タブレットで、理由もなくお絵かきソフトに線を引き続けていた時間がそれでした。
効率だけでは満たされない理由は「「人はパンのみにて生きるにあらず」の意味|効率だけでは満たされない理由」でくわしく書いています。
方法③ 「感情のインデックス」を作る
次に、最近1週間を振り返ってみましょう。成果ではなく、感情だけに注目します。
チェックするポイント
- 少し嬉しかった瞬間
- 心が落ち着いた瞬間
- 思わず立ち止まった瞬間
- 笑顔になった瞬間
たとえば、次のような出来事です。
- 夕焼けが綺麗だった
- コーヒーがおいしく淹れられた
- 猫と目が合った
- 好きな音楽が流れてきた
一つひとつは小さくても、そこにあなたの価値観が表れています。
方法④ 「もし明日世界が終わるなら?」と考える
少し極端な問いですが、考えるきっかけとしては役立ちます。合理性は、未来のためにあるものです。もし未来がないとしたら、私たちは何を選ぶでしょうか。
自分に問いかける質問
- 最後に誰と会いたいか
- 最後に何を食べたいか
- 最後に何を話したいか
- 最後にどこへ行きたいか
その答えには、自分が本当に大切にしているものが表れます。多くの場合、人は効率や成果よりも、人との関係や意味のある体験を選ぶのではないでしょうか。
私が試して感じたこと
私自身がこうした問いを試してみて一番効果を感じたのは、「自分の時間を大事にする」と意識することでした。
思い出せた豊かな時間は、特別な出来事というより、自分が好きだと感じているものに触れている時間です。何をしても楽しくなかった時期があったからこそ、好きなものに使う時間は、効率とは別のものとして大切にしたいと考えています。
「好きなもの」は、大きな趣味でなくてもいいと思います。好きな飲み物をゆっくり味わう、好きな音楽を倍速にせずに聴くなど、小さな時間から取り戻していくほうが続けやすいのかもしれません。そうした小さな「好き」に気づくことが、豊かな時間を思い出す入り口になる気がしています。
豊かな時間とは何か
豊かな時間とは、何かを達成するための時間ではありません。その瞬間を味わうこと自体が目的になっている時間です。たとえば、次のようなものがあります。
- 結論のない雑談
- 成果を求めない趣味
- 手間を楽しむ料理
- 何もしない休日
- 散歩や読書
これらは一見すると非効率です。しかし、人間らしい豊かさは、こうした時間の中で育まれるのだと思います。
プログラミング学習にも通じること
Photo by Julia Taubitz on Unsplash
プログラミングを学んでいると、どうしても効率化を意識する場面が増えます。ショートカットを覚えたり、便利なツールやAIを活用したりすることは、学習や仕事を進めるうえで大きな助けになります。
ただ、ときどき立ち止まって「なぜ効率化したいのだろう?」と考えてみたいところです。
時間を短くすること自体が目的ではありません。その先にある「家族との時間を増やしたい」「趣味を楽しみたい」「ゆっくり休みたい」といった、心を豊かにする時間を作ることが、本来の目的なのかもしれません。
生成AIの発展やショート動画の普及などで、効率はますます重視されるようになっています。だからこそ、効率を追い求めるだけでなく、その先で自分がどんな時間を過ごしたいのかを忘れないことも大切ではないでしょうか。
これは、子どもにプログラミングを教えるときにも大切にしたい考え方です。完成までの近道だけでなく、寄り道のように見える遊びや試しの中で、子どもは「楽しい」「もっと作りたい」という気持ちを育てていくのだと思います。大人から見ると無駄に見える時間も、その子にとっては豊かな時間なのかもしれません。
この記事のまとめ
合理性やタイパは便利な考え方です。しかし、それだけで人生が豊かになるわけではありません。豊かな時間とは、自分自身が「心地よい」と感じる時間です。
五感の記憶をたどる。子どもの頃を思い出す。感情を記録する。人生の終わりを想像してみる。こうした問いを通じて、自分だけの価値観が少しずつ見えてきます。
効率的な時間が未来への投資なら、豊かな時間は「今この瞬間」を肯定する時間なのかもしれません。忙しい毎日だからこそ、自分にとっての豊かな時間を、少しずつ取り戻していきたいものです。
よくある質問
Q. 豊かな時間と暇な時間は違いますか?
A. 違うと考えています。豊かな時間は、その時間自体に価値を感じている状態です。ただ退屈なだけの時間とは異なります。
Q. 忙しくて余裕がありません。
A. まずは1日5分でも構いません。小さな心地よさに意識を向けることから始めてみてください。
Q. 子どもの頃の記憶があまりありません。
A. 好きだった音楽や匂い、場所など、感覚から思い出すと記憶が呼び起こされやすくなります。
Q. 感情のインデックスはどう記録すればいいですか?
A. ノートやスマホのメモに「少し嬉しかったこと」を毎日1つ書くだけでも十分です。
Q. 豊かな時間は生産性を下げませんか?
A. 短期的には非効率に見えることもありますが、長い目で見ると、心の回復や創造性につながる可能性があります。
参考
- Frontiers in Psychology – The Proust Machine
- Self-Determination Theory
- V.E.フランクル『夜と霧 新版』(みすず書房)国立国会図書館サーチ
関連記事
